さかつくの雑記

感想記事は途中からネタバレ入ります

『花の唄』『I beg you』曲紹介(比較) 劇場版 Fate/stay night Heaven's Feel 主題歌(Aimer)  

「わるいことをしたらきっと貴方が 怒ってくれると約束したよね

だからきっともう一度 私を見つけてくれるよね」

ー花の唄より抜粋ー

 

 

今回の記事では、 劇場版 Fate/stay night Heaven's Feel (以下、HF)の第1,2章の主題歌を比較しようと思います。

『花の唄』と『I beg you』。どちらもHFのヒロインである間桐桜の心情を歌った曲です。

そのためHFの内容を踏まえた上で、メロディと歌詞の違いを比較をします。

 

※ネタバレ注意

 

 

 

 

・メロディ

『I beg you』のテーマは”狂気”だと思います。第1章では抑えられていた、桜の持つ狂気の発露、これを表現した曲調に思えます。

一番の特徴は、

『I beg you』のメロディを演奏の大部分がAimerさんの「声」に限られていること。

前奏も後奏もなく、AメロBメロに至っては声とリズム楽器と効果音じみた音だけで進行していきます。2番で加えられる特徴的な変化も、リズム楽器と共にコーラスで「Ah,Ah-」とやはり声が担当しています。

(Cメロについてはメロディ楽器が印象強いですが、この部分は桜に残された理性が前面に出ており、それが次第に埋まっていく様を表現しているように思います)

 

対して『花の唄』では前奏も後奏、曲中の大部分についてもメロディ楽器が演奏されています。

 

このメロディの違いが表現するところは「調和の有無」であると思います。声と楽器の調和、楽器の中でも和音であったりとメロディにはハーモニーが要求されます。

ですが、『I beg you』にはそれが極端に少ない。第2章の桜の様子も鑑みて言葉にすると「独りよがり」な協調といったところでしょうか。

 

 

・歌詞

『花の唄』のテーマの1つに「束の間の、仮初めの平和」があると思います。「その日々は夢のように」から始まり「季節が行くことを忘れ 静かな水底のような時間にいた」と儚げな優しい日々を描写しつつ、そんな時間が聖杯戦争によって崩れていくことを暗示しているようです。

余談ではありますが、HF第2章の後半で『花の唄』のオーケストラアレンジが流れます。そのシーンがまさに束の間の幸せな日々の体現なので、歌詞を思い浮かべながら見ると良いと思います。

 

閑話休題

『花の唄』には「貴方」に対して、してあげたいことはあっても、何かを直接要求する歌詞はありません。

 

「私傷つけるものを貴方は許さないでくれた それだけでいいの」

 

「わるいことをしたらきっと貴方が 怒ってくれると約束したよね

だからきっともう一度 私を見つけてくれるよね」

 

この2つについても過去にした約束から、桜が期待をしているだけで「貴方」に頼んでいるわけではありません。

 

対して、『I beg you』では「あわれみをください」といきなり要求から始まります。そのあとも「泥だらけの手を取って」「離さないで どうかずっと側にいて」など、直接的な要求や愛の表現が多用されていきます。

 

この桜の愛情は執着によるものが大きいです。HF第2章で分かりやすいシーンでいうと、遠坂凛が士郎のことを以前から知っていたと口にしたシーンでしょうか。ここを境に桜の態度が変わっていくことになります。以前は魔力供給をするのに血を飲むだけで理性を抑えていましたが、凛に士郎が取られることを恐れた桜は体の関係を持ちかけます。

その後凛を姉と呼べたのも体の関係をもったことで心の余裕ができたという面があります。

 

 

さて、この2曲、ひいてはHFを理解する際に勘違いしてはいけないのが、

桜の心情の変化は、影によってまるっきり変えられてしまったわけではないということです。

あの狂気はもともと桜の内にあったものであり理性によって抑えていたが、影の後押しによって前面に出てきてしまった。

 

(分かっている方も多いと思いますが、大事なことなので念のために注釈をしておきました)

 

 

比較は以上になります。最後に簡単に感想をば。 

『花の唄』を聞いたとき、桜の歌としての完成度の高さに驚いて、第2章でもこのクオリティで出すのは難しいんじゃないかと思っていましたが、完全に杞憂でした。

梶浦由記さん良い仕事しすぎですね。Aimerさんの歌い方も刺さりました。特に『I  beg you』の最後の「側にいて」の歌い方が大好きです。あの切羽詰まった感じがたまりません。

 

そんなこんなで第3章の主題歌にも期待したいと思います。それでは。